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2023年6月18日日曜日

MBA卒業から10年以上経った今思うこと

気づけばRossを卒業してから10年以上経つわけで、先日ひさびさに自分が書いたこのブログを振り返ってみて、この時はその重要性にそこまで気づいていなかったが、振り返ってみるとむしろこちらの方が重要だったのではないか、と今更ながら感じたことを若干ながら記しておきたい。

在学中は、どうしてもStrategyとかFinanceとかのThe MBA的な授業に目が行きがちだったが、卒業後に海外営業、会社の合併に伴う組織改正の検討・実行、取締役会・経営会議の会社の意思決定機関の運営、経済団体トップ秘書などを経て、現在100名弱の規模の組織の運営補佐などをやってみて思うのは、端的に言うと、会社全体の諸機能がある目的や方向性に基づいて一貫性ある形で設計され運営されているかどうかということが、会社全体のパフォーマンスを上げるうえでは死活的に重要である、ということだ。

具体的には、組織の機能設計・権限基準の設計、それらを活かすための人材の獲得・育成・配置等々ということになるわけだが、日本の大学でこういったことを包括的に扱う授業にお目にかかったことは無いし、普通にビジネスマンとして仕事をしていても、経営企画・総務・人事部門で働いたり、組織の上位者になるまではまず接することのない分野だと思う。

RossはMO(Organizational Management)やリーダーシップ系の授業が強いと言われており名物教授もいたが、正直言って在学当時はそれらの授業の本当の意味合いや価値を理解できるだけの能力や経験が自分自身に不足していたと言わざるを得ない。今更ながらではあるが、このあたりの教訓になりそうな言葉をRossの授業から振り返って順不同で記載してみたい。

1.「個別の企業の製品・サービス群や顧客基盤と、それらを支える企業活動(人事・財務・技術開発・営業・アフターサービス・生産・輸送・調達)の間に一貫性がとれているかどうか(内部一貫性)、また、外部(産業構造)の環境変化に製品や顧客基盤、企業活動が対応できているかどうか(外部一貫性)が企業活動にとっては重要だ。」

→部門長もしくはそれを補佐する立場で部門全体の業務運営や他部門との交渉・調整をした経験のある方なら頷いていただけると思うが、この内部一貫性・外部一貫性が取れなくなった時、企業はおかしくなる。すぐに目に見える危機には至らなくても、個々の部門がちぐはぐで何のために仕事をやっているのか見えなくなり、それぞれ一生懸命仕事をしていても全体としての結果につながりづらくなるなど、その企業は「見えない危機」に直面しつつある可能性が高い。

2.「リーダーの役割は、時代の変化にマッチした 変革を企業にもたらすことである」

→MBAで学ぶスキルの多くは、「経営環境の不確実性や変動に対応して舵取りをすること」を可能にしてくれるが、それらはマネジャー層に期待されている役割であり、リーダー(企業経営幹部)に期待されている役割はそうではない。優秀なマネジャーは、既存の枠組みの中でのパフォーマンスを最大化するよう活躍してくれるのだが、本当にそれだけでいいのか、はリーダー自身が広く内外の情報を集めて判断しなければならない。余談ではあるが、当時から米国企業のトップリーダーは、変化をポジティブなものとして捉える志向が強く、多くの日本企業が「変えてはならないもの」を大事にする傾向があることとは対照的だと感じた。どちらも相対的なもので結果論もあろうが、バイアスにとらわれず、危機に直面する中でどうすれば最も強くなれるのか、を考え抜くことは古今東西変わらずリーダーが果たすべき役割なのだろう。

3.「Put your feet in other's shoes」

→日本語で言えば「相手の立場に立つ」ということだが、これは実践するのは本当に難しいことである。部下との対話でも、交渉相手との商談においても、相手の話を聞きながらも途中からは自分がどう返そうかばかりを考えていることが多い。本当に相手の立場も分かったうえでの解決策を示すならば、最近は、自分と相手との対話状況を客観視しつつ、それよりも一段高い視座にもう一人の「仮想」の自分を押し上げて、その立場から考えるというイメージでとらえるようにしているが、やってみるとなかなか難しいものである。

(続く)